大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 平成7年(ワ)1505号 判決

原告

高木佑介

被告

上田あゆみ

主文

一  被告は、原告に対し、金一〇四万四二九四円及び内金九四万四二九四円に対する平成六年九月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、三九八万三八九八円及び内三六二万三八九八円に対する平成六年九月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、自転車に乗つて走行中、被告運転の普通乗用自動車と出会い頭衝突して転倒し、傷害を負つて入通院したとして、被告に対して民法七〇九条及び自賠法三条により損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  次の事故(以下「本件事故」という。)の発生

(一) 日時 平成六年九月八日午後六時一〇分頃

(二) 場所 神戸市中央区旭通一丁目一六番先交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 加害車 被告所有、運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)

(四) 被害車 原告が乗つていた自転車(以下「原告車」という。)

(五) 態様 原告車と被告車が出会い頭衝突した。

2  責任

被告は、保有していた被告車を運転して西進し、信号機の設置されていない本件交差点を通過するに当たり、原告の進行する道路に一旦停止の標識があることに気を許し、十分な徐行も安全確認もしないまま、同交差点に進入して被告車を原告車に衝突させ、同車を転倒させたものであるから、民法七〇九条及び自賠法三条により原告が受けた後記損害を賠償する責任がある(甲一、乙一、原告法定代理人及び被告各本人)。

3  原告の傷害及び治療経過(甲二の一、三ないし七)

原告は、本件事故により、左大腿骨骨折、左頬部打撲皮下血腫、頭部外傷Ⅱ型の傷害を受け、次のとおり吉田アーデント病院に入通院し、平成七年四月一三日治癒した。

(一) 平成六年九月八日から同年一二月二九日まで一一三日間入院

(二) 平成七年一月一日から同年四月一三日まで通院(実治療日数四日)

二  争点

1  過失相殺

2  原告の損害額

第三争点に対する判断

一  過失相殺について

1  証拠(甲一、一二、乙一、原告法定代理人及び被告本人、弁論の全趣旨)を総合すると、次の事実が認められる。

(一) 本件交差点は、車道幅員八メートルの東西に通じる一方通行道路(以下「東西道路」という。)と同六・八メートルの南北に通じる一方通行道路(以下「南北道路」という。)とが交差している。

南北道路の本件交差点に進入する手前に一時停止の標識に設置されている。

(二) 原告は、本件事故直前、原告車に乗り、南北道路を南進し、本件交差点手前の一時停止の標識に従い、停止線付近で一時停止をして左右を確認したが、その地点では東西道路の見通しが良くなかつたため、十分には確認できなかつた。しかし、原告は、左右から進行して来る自動車がいないと思い込み、その後は左右の確認をすることなく、同交差点に進入し、衝突直前に被告車に気づいたが、何らの回避措置をとることなく、左側から西進して来た被告車に衝突された。

(三) 被告は、本件事故直前、被告車を運転し、時速一〇ないし二〇キロメートルの速度で東西道路を西進し、本件交差点に進入する少し前で左右の確認をし、同交差点に進入して来る車両がいなかつたため、同速度で進行を続け、同交差点に進入した地点辺りで四・八メートル右前方を同交差点内に進入して来る原告車を発見し、急ブレーキをかけ、左にハンドルを切つたが及ばず、原告車と衝突した。

2  右認定によれば、原告は、一時停止の標識に従い、停止線付近で一時停止したが、同地点では左右から進行して来る車両の確認が十分にはできなかつたから、その後も左右の確認をして進行すべきところ、その後は左右の確認をしないで同交差点に進入したものであるから、原告の過失は、相当重いというべきである。

そこで、右及び前記認定を基に、原告と被告の過失を対比すると、原告と被告は、お互いに前方左右の確認が不十分であつたが、原告進行の南北道路には一時停止の標識があつたこと、原告車は自転車であるが、被告車は普通乗用自動車であること、原告は、本件事故当時、一〇歳の幼児であつたこと(甲一)やその他本件に現れた一切の諸事情を考慮すると、原告が三割で、被告が七割とみるのが相当である。

二  原告の損害額について

1  治療費(請求額・五五万二六六一円) 四六万一四七六円

証拠(原告法定代理人本人、弁論の全趣旨)によると、原告の治療費として四六万一四七六円を要したことが認められる。

2  付添看護費(請求額・九一万三九三八円) 八四万〇四六三円

原告の入院中、職業付添人の付添看護がなされ、五六万〇四六三円を要したことは当事者間に争いがない。

証拠(甲二の一・二、三ないし五、八の一ないし七、原告法定代理人本人、弁論の全趣旨)によると、原告は、本件事故による入院期間中、付添看護が必要であつたこと、平成六年九月一九日から同年一一月一五日までは職業付添人の付添看護がなされ、その他の合計五六日間は原告法定代理人親権者母が勤務先を休むなどして付添看護をしたことが認められる。

近親者の入院付添看護は一日当たり五〇〇〇円が相当であるから、その付添看護費は二八万円となる。

3  入院雑費(請求額・一五万八二〇〇円) 一四万六九〇〇円

原告の本件事故による入院合計期間が一一三日間であることは前記のとおりであるところ、一日当たりの入院雑費は一三〇〇円が相当であるから、相当な入院雑費は一四万六九〇〇円となる。

4  通院交通費(請求及び認容額・五万八三一〇円)

当事者間に争いがない。

5  装具代(請求及び認容額・四万一四二〇円)

松葉杖、車椅子、リハビリシユーズ及びコルセツト代として合計四万一四二〇円の装具代を要したことは当事者間に争いがない。

6  文書料(請求及び認容額・五一五〇円)

当事者間に争いがない。

7  学習費(請求及び認容額・六万一三〇九円)

当事者間に争いがない。

8  慰謝料(請求額・一八〇万円) 一六〇万円

原告の傷害の内容・程度、入・通院期間その他本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると、原告が本件事故によつて受けた精神的慰謝料は一六〇万円が相当である。

9  物損(請求及び認容額・三万二九一〇円)

本件事故による体操服及び自転車の損害が三万二九一〇円であることは当事者間に争いがない。

10  原告の前記損害額合計 三二四万七九三八円

11  過失相殺

原告の過失が三〇パーセントであることは前記認定のとおりであるから、これを減額すると、その後に原告が請求できる金額は二二七万三五五六円(円未満切捨)となる。

12  損害の填補

原告が、被告から、本件事故による損害の填補として治療費四六万一四七六円、コルセツト代三万三六九〇円及び内払八三万四〇九六円の合計一三二万九二六二円の各支払を受けたことは当事者間に争いがないから、これを右損害金から控除すると、その後の金額は九四万四二九四円となる。

13  弁護士費用(請求額・三六万円) 一〇万円

本件事案の内容、審理経過及び認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、一〇万円が相当である。

三  まとめ

よつて、原告の請求は、被告に対し、損害金一〇四万四二九四円及び内金九四万四二九四円に対する本件事故の日である平成六年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとする。

(裁判官 横田勝年)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例